アンダンテ・カンタービレ
こんにちは。
チャイコフスキー作曲の、「アンダンテ・カンタービレ」という曲をご存知ですか?
有名な曲なのでどこかで聞いたことがあるかと思います。近いところでは、吉岡里帆さんと星野源さんが出ているどん兵衛のCMで使われていました。
アンダンテ・カンタービレ自体の意味は、「歩くような速さで歌うように」です。音楽用語です。
ロシアの田舎の、長閑で美しい光景が目に浮かぶような曲です。私はこの曲が大好きで、今年の発表会でどうしても弾きたくて、もともとは弦楽四重奏曲だったのを、ピアノ用にアレンジして、なおかつ簡単にした楽譜を探し出して先生に見せました。
先生はビミョーな表情でした(笑)
おそらく、なんでまたこの曲をと思っていたのだと思います。
私が今習っているのはフリーベースアコーディオンという、クラシック用の楽器なので、先生としてはバッハやスカルラッティやラモーなどのバロック音楽をやってほしいのだろうと推測できます。
でも去年も一昨年もバロック音楽をやって、正直飽きてしまいました。聴くのはいいのですが。
発表会は1年に1度だけ、ほぼ1年かけて1曲を仕上げていくので、どうしても自分のやりたい曲をレパートリーに入れたくなります。
なのでとにかく練習して、先生がまあいいいか、と思うレベルに持って行かなくてはなりません。
でも簡単にアレンジした曲を弾いているとやはり物足りなくなってきて、結局、全音ピアノピースの中にある、アンダンテ・カンタービレのピアノ楽譜をそのまま弾くことにしました。しかしこれがとにかく難しくて。。。
左手の骨折などもあって、発表会までに仕上げられるか不安でした。
発表会の2カ月前、先生に、こんな感じで発表会大丈夫でしょうかと尋ねたら、「次回のレッスンまでにある程度仕上げられなかったら、他の曲に変えましょう」と言われてしまいました(^◇^;)
他の曲とはバッハです。
せっかく半年前から練習してきたのにここでバッハにされては困ると、それから2週間、必死で練習しました。
次のレッスンで弾いたところ、先生が初めて「いい曲ねぇ」と言ったのです。
つまり、発表会で弾いてもよいというお許しが出たのでした。
もうヤレヤレです。
それ以降は、とにかく楽譜通りに間違えずに弾くことを目標にし、それが出来たらアーティキュレーション(表現方法)を先生に教えてもらい、仕上げに本番でどんなに緊張していても弾けるようにさらに練習を積みます。
この、緊張していても弾けるようににるにはどうしたらいいかというのは、ここ2、3年ずっと考え続けてきたことでした。
曲が難しくなるにつれ、練習ではうまく弾けていても本番になると緊張でガチガチになり、どこかでつまずくようになります。なんでもない所で間違えたりするのです。そうならないためにはどうすればいいのか。
もちろん、1に練習2に練習が大原則です。練習は嘘をつきません。
でもよく言われることですが、1曲を通しで何回も弾いてもあまり効果はないんですよね。
先生に教わった練習方法は、小節に1から順番に番号をふり(アンダンテ・カンタービレは180小節でした)、乱数アプリなどを使って、出た数字の小節から弾き始めるという方法です。
途中から間違えずに弾くのって意外と難しいです。それをひたすら繰り返して、どこからでもかかってこい!状態まで引き上げます(笑)
先生はさらに、目を閉じて楽譜の上に指を置いて、その音から弾き始めるという練習方法も勧めてくれました。これは小節の途中から弾くことになるのでさらに難しくなります。
もう一つ大切なことはコンディションを整えることでした。
発表会前1カ月は、余計な予定は入れないようにしました。人にもあまり会わず、お芝居や映画なども自粛。特に夜のお出かけは私にはダメージが大きいので一切しませんでした。
発表会前日には必死で練習しないこと、当日も通しでは弾かない、ストレッチをして体を緩めるなど、思い付くことはなんでもやりました。
本番で着る服で1回は弾いてみるのも大事です。トップスがどうしても着心地が悪くて、代わりの物を探しに近所のスーパーに前日に買いに走りました。運良く安くて見た目がよくて着心地もよい物が見つかりました。
で、当日を迎えました。
発表会の初っぱなが私も参加しているアンサンブルで、そのあと私のソロ本番まで1時間半ほど空いてしまうので、夕ご飯を食べに外に出ました。
自分の楽屋での音ならしまでずっとカフェで過ごして、会場に戻り、着替えて楽屋入りしてちょこっと音出しして、舞台そでに向かいました。
舞台そでで出番を待つ時間が一番苦手です。得意な人もいないと思うけど(笑)
緊張感が否が応でも高まってきて、脈拍はどんどん速くなっていくし、いくら深呼吸(正確には息を吐く)してももう落ち着くことなどできません。
いよいよ本番です。
照明で明るく照らされた舞台に出て、椅子に座り、譜面台を置いて角度を調整して弾き出そうとしたとき、挨拶をしていないことに気が付き(笑)また立ち上がってお辞儀。やっぱり緊張してると自分にツッコミを入れました。
弾き始めて、いくつかある間違えやすい危険な箇所をクリアしながら進んでいくと、あら不思議、なんだか気分が乗ってきたのです。これは最後まで行けるかなと思い、ダメダメ、そんなことを考えるからミスるのだと戒め、それでもノーミスで3分の2ほど来ると、なんかこれはとてもいい感じだと、幸せな気分になってきました。
あごがだんだん上がってきます。すごいドヤ顔になっていたに違いありません(笑)。
そこからはこれでもかというほど情感たっぷりに歌い上げて最後、アーメンと聞こえる高音の美しい和音で終わりました。
心の中でガッツポーズしました。気持ちを隠そうにも顔がニヤけてしまい、捌けるときにかぶりつきの端の席で見ていた先生とも目が合って、ニタ~っとした顔を先生に向けて、舞台そでに引っ込みました(笑)。
演奏後、知り合いの生徒さん(かなりの腕前の人)に会うと、「すごい難しかったんじゃない?」と聞かれ、さすがよくわかってるなあと感心しました。
いつものお仲間さん(めったに人を褒めない)には、「練習より良い感じだったね」と言われました。彼女としてはかなり褒めているはずです(笑)
発表会の様子は後日、ブルーレイディスクの記録で見ることができます。どんなドヤ顔になっていたのか見るのが楽しみです。発表会のブルーレイが楽しみになったのも初めてです。
この経験にはおまけもあります。
次に弾こうと思っている曲の譜面を手に入れて、さっそく弾いてみたのですが、なんだか簡単に感じてしまいました。おそらく、アンダンテ・カンタービレという私にとってはかなりチャレンジングな曲をやったおかげで、少し腕が上がったのだと思います。
私ももう若くはないので、この先どこまで行けるかわかりませんが、努力は続けていこうと思いました。
you tubeからお借りしました。こんな曲です↓
アンダンテ・カンタービレ Andante Cantabile
読んでいただいてありがとうございました。