今日も一人でお昼ごはん

コミュ障・人見知りで友達のいないぼっちおばさん専業主婦のひとりごとです。

1年6組のTくん

 

こんにちは。

 

今日は、私が小学1年生の時の、忘れられない経験をお話をしたいと思います。

 

小学校入学式の翌日、私は緊張しつつも新しい環境にわくわくしながら自分の教室に入っていきました。

 

よく覚えてはいないのですが、おそらく新しいクラスメイトの女の子たちとおしゃべりをしていた時だと思います。

突然、後ろから誰かに髪飾りを触られました。

びっくりして振り返ると、1年生にしては大柄な男の子がなにかブツブツ言いながら、ニコニコ嬉しそうに立っています。

私を含め女の子たちは訳がわからず怖くなって逃げました。

すると、その男の子は追ってきます。

女の子たちはパニックになって教室内を逃げ回りました。

 

そこへ、担任の女性教諭が入って来て、子どもたちを落ち着かせ、どのように説明したのか覚えていないのですが、おそらく、その風変りな男の子をみんなに紹介したのだと思います。

 

私たちは先生の説明に納得して、おとなしく席に着いたのでした。

 

Tくんは、他人とコミュニケーションを取るのがかなり難しそうでした。

 

親には自閉症という説明があったのかもしれません。

 

何か節をつけて同じことをずっとつぶやいたり、または歌を歌ったりしていて、じっとすることが難しいのか、体はつねに左右に揺れていました。

教室でもおとなしく机につくことは難しいようで、教室内を歩き回り、時には教室から脱走して保健室のベッドで遊んだりしていました。

もちろん授業内容も理解しているとは思われませんでした。

 

そのうち保健室への脱走が頻繁になって先生も困ったのか、ある日学校に行くと、教室の後ろに保健室にあるベッドがデンと置かれています。

こうすれば、Tくんはいつでも大好きなベッドの上でゴロゴロでき、保健室へ脱走する回数も減るのではないかという先生のアイデアでした。

これが功を奏し、Tくんは教室から抜け出すこともなくなりました。

 

私たちクラスメイトは次第にTくんに慣れ、彼は人気者となっていきました

 

Tくんはたいていニコニコ機嫌良くしていて、上機嫌なときには「山寺の和尚さん」の歌を口ずさんだりして、彼の周りにはハッピーなオーラが漂っていました。

 

先生にも、クラスのお友達にも大切にされ、守られていました。

 

髪飾りをずっと触られ続けても、もう嫌がる女の子はいません。

彼が授業中に教室内を歩き回っても、ベッドでゴロゴロし始めても他の生徒たちは特に気にすることもなく、授業を聞いていました。

彼が何をしようと、授業は普通に成立していました。

 

今考えても、そのときの担任の先生の力量には驚きます。

自閉症児を受け入れつつ他の生徒全員に目を配りながら授業を進めるなんてなかなか出来るものではありません。

学生主任も任されていて、一目置かれていた先生だったのだと思います。

 保護者からの信頼も厚く、私の母も、その先生を心から尊敬しているようでした。

 

今だったら、授業中に歩き回ったりする児童がいたら、間違いなく保護者から苦情が来ますよね。

まして、教室の後ろにベッドを置くなんて、考えられないでしょう。

おおらかなあの時代と先生の度量の大きさから出来たことなのだと思います。

  

母から聞いた話では、Tくんは小学校に上がる少し前までは普通に発育していたそうです。

それが、どういうわけか次第に知能が退行してゆき、ついにコミュニケーションも取り辛い状態になったそうです。

調べてみると、たしかにそういう症状が出る病気(?)というか障害が紹介されていました。

 

順調に発達していた子どもが、ある日を境に赤ちゃんのような状態に戻って行くなんて、親にとって恐ろしいことですよね。

原因もわからないのです。

彼が普通学級に入れられたのは、おそらく、また元のようになってほしいというお母さんの強い願いがあったからだと思います。

 

Tくんとは意思疎通ができないので、どのように感じていたのかはわかりませんが、いつもニコニコして楽しそうではありました。

これはあくまでも私の印象ですが、そのクラスも暖かい雰囲気に包まれていて、その1年間は私自身もあまり嫌な思い出がありません。 

 

一番弱い立場にいる人が幸せで楽しそうにしていれば、周りは自然と幸せになっていく…ということなのかな?

 

Tくんのことは忘れられないし、あのほっこりとした6組のことも忘れられません。それを育んでくれた先生への感謝の気持ちも。 

   

読んでいただいてありがとうございました。

 

                 


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